祖母も母も時々この話をした。
小さい頃全然しゃべらなくて、言葉が遅い子だって心配してしゃもじをなめさせたと。そしたら話すようになったのだと。しゃもじをなめて口が滑らかになって話せるようになったという。そんな事あるだろうかとずーと思っていた。
最近気が付いたことがある。というか何故もっと早く気が付かなかったんだろうと思う。生まれてしばらくは関西にいたらしい。らしいというのは私の出生届は生まれて2年たってから出されたのだとか。父が忘れていて罰金も払ったと言っていた。いくら仕事で忙しい時期だったとはいえ忘れるものなのか。
生まれて数年して関西から沖縄に近い島(両親の出身地)に戻ったのだそうな。
私がしゃべらなかった理由はこれだと思う。関西弁を聞いて育った私がすぐさま島の方言を理解できるかといえば無理だと思う。夫に方言を使って話すと外国語みたいと言われる。それぐらい言葉が違う。
そうだねという言葉を関西で言うとしたら「そやね」とかなのかな。島では「うがしがろ」かな。そやねからうがしがろでは小さい子供には解らないだろう。解らない間、私はじっと聞いていたんじゃないだろうか。そして理解できるようになった頃に祖母がしゃもじをなめさせた。そういう事なら納得できる。
祖母も母もそして私も何故気が付かなかったのか。気にしないにも程があるなと思うけれど、それぐらいの方が生きやすいのかもしれない。細かい事は気にしない。父もこのタイプか。何しろ初めての娘の出生届を忘れるぐらいだもの。これが妹なら泣いて抗議したと思う。けれど私も祖母や母と、父とも同じく細かい事は気にしないのだろうな。